入江内科小児科医院スタッフブログ

2013年05月31日

風邪の原因 成人ではウイルス以外も多い

 成人の『感冒』あるいは『風邪』の大部分はウイルスが原因と言われるが、十分な科学的根拠があるわけではない。中、高年者では細菌の関与の頻度はかなり高い可能性がある。小児から若年者ではウイ
ルスの関与は多いが、年齢が進むほどウイルスの関与率は低下するとの報告がある
ウイルス説の根拠乏しい
  風邪といっても、何を指すかがはっきりしないので、論文を見る上で『非特異性上気道炎』と『急性気管支炎』の2つを風邪として検討した。前者は感冒あるいはcommon coldとも呼ばれている。要するに、感冒と言えば、鼻汁や鼻閉などの鼻症状、咽頭痛があり、かつ比較的軽い咳や痰などの下気道症状が若干あるもの。風邪となると、より下気道症状が目立つものは、厳密に言えば急性気管支炎だが、これも臨床の現場では風邪として扱われる事が多いので、それをも含んだ総称として風邪という言葉を選んだ。 その前提で、風邪あるいは感冒の起炎菌を実証的に調べた研究は実は少ない。 しかも対象はほとんど小児で、成人を調べたものはごく少ない。 成人の感冒を調べた研究で、信頼性が高いと判断できたのは、1998年のフィンランドのMakelaらの報告くらい。大学生200人を対象として、「感冒」のエピソードを最新の検査技術を総動員して原因菌を探索。この結果、69%でウイルスが原因と分かった。確かに信頼度は高く、立派な研究と見るも、この研究では成人全般をとらえきれないと見ている。集団生活をしている20代前半の若者の感冒を対象とした特別な集団で起炎菌の7割がウイルスと証明しにすぎない。30歳以上についてはこのような科学的調査はほとんどない。
中高年は別
 中高年の風邪の原因菌を考える際、2つの大規模な地域密着型の研究が参考になる。一つは1960年代から70年代に米国で行われた研究で、風邪の原因はウイルス説の根拠とされる最初期の研究だ。ウイルスの検出頻度は小児においては高く、年齢が高くなるに連れて急速に低下、特に40歳以上では極めて低かった、と報告された。
 最近の研究では、2003年から2005年に行われたタイの研究がある。ある地域の8つの病院の共同研究で、急性気道感染症のライノウイルス検出頻度を見た。入院、外来ともに20歳以下、特に5歳以下ではウイルス検出率が高く、一方中高年では検出頻度は数分の1にとどまった。これらの研究結果から、成人ではウイルスの関与する率は低い、と受け止めるのが常識的な解釈だろう。さらに、近年の基礎研究から、ライノウイルス、インフルエンザウイルス などのウイルス感染により、気道は二次性に細菌感染を合併しやすくなるとの考え方が常識となりつつある。宿主の気道上皮が急速に変化してしまうからだ。そのような細菌の二次性感染を考える上で参考にするのが、国内で1989年に東北大学の渡辺彰氏が行った研究だ。渡辺氏は地域医療機関と連携して、急性気道感染症の2359人を検証。年齢を問わず高率に細菌の二次感染が見られると報告したものだ。
 急性気管支炎も、原因はウイルス」と言われるが、実はそれを実証した基礎研究は少ない。Flahertyが急性気管支炎の原因について多くの研究を要約しており、ウイルス説の「典拠」として頻繁に引用されてきた。この総説の本文について、要約の結果として『原因はウイルスでもあろうし、細菌でもあろう』と書かれている。『大部分はウイルス性である』とはどこにも書いていない。中、高年の風邪の原因として、細菌関与の頻度が高いと推察される。小児、若者とは分けて考えるべきだろう。
細菌相互作用に鍵?
視点を変えると、確かに風邪の中にも子どもが幼稚園からもらってきて親がそれにかかる、いかにも感染性のケースはある。一方で、中、高年者が、誰とも会わないのに体を冷やしてしまって起こる風邪が相当な頻度で起きている。これがどうしてウイルス感染であり得るだろうか。そんな問題意識もある。当然別の機序を考えるべきだ。上気道で常在菌が病因性のある菌の侵入を抑制していることが分かっている。寒冷曝露などによりそれら常在菌を含む局所の免疫機構が破綻した時に、病原菌が侵入し、風邪を起こす、という考え方はどうだろうか。新しい観点から検証をしていくと、細菌性の風邪が起こる仕組みが分かってくる可能性がある。

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2013年05月29日

とびひはプール禁止

「とびひはプール禁止」統一見解
水いぼ、頭ジラミ、疥癬は条件付きで可能、関連2学会が合同で発表

2013年5月28日 日本臨床皮膚科医会 カテゴリ: 小児科疾患・皮膚疾患・その他

 日本臨床皮膚科医会は、日本小児皮膚科学会と合同で「皮膚の学校感染症とプールに関する統一見解」を発表した。保護者や教師らに向け、皮膚疾患のある小児がプールに入って良いかどうか判断する際の目安を示している。学校保健安全法で第三種(その他の感染症)に指定されている4疾患について取り上げた。

 伝染性膿痂疹(とびひ)は、治るまでプールは禁止。水を介して感染することはないが、小児同士の接触で症状の悪化や感染の恐れがあるため。

 伝染性軟属腫(水いぼ)は、プールに入ってもよい。タオルや浮輪などの共用はできるだけ避ける。プールの後はシャワーで肌を洗うことを推奨している。

 頭ジラミも治療を開始した状態であればプール可。タオル、ヘアブラシ、水泳帽などの貸し借りはしない。

 疥癬も治療開始後であればプール可。ただし、角化型疥癬は感染力が強いので、外出自体を控える必要がある。

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